2024年11月14日更新
エリアマーケティング:商圏分析の事例
スーパーやドラッグストアの出店時には、出店後どの程度の売上が期待できるかは重要な意思決定の材料になります。また、出店後期待したように売上の数字が上がらなかった場合に、対策を考えるうえでもその要因を探ることは重要です。
今回の事例
出店後、期待した売上に届かないドラッグストアーの事例を紹介します。
要因を探る手順は以下の通りです。
- 売上推定モデルを用いてエリアごとの売上推定値を算出する。
- 既存の顧客データからエリアごとの売上や来店頻度を確認する。
- 実際の売上と、売上推定モデルで算出した推定値を比較し、エリアごとのパフォーマンスの差異から要因を推定する。
売上推定モデルを用いた売上推定
店舗での購買に至る動機は様々なので、そのすべてを考慮して計算することは困難なのですが、一般的に利用しやすい推定モデルとしては、店舗の魅力度と来店に要するコスト(=距離や時間)を用いた予測モデルで、その代表としてハフモデルと呼ばれるものがあります。ハフモデルの詳細はここでは割愛しますが、対象エリアの競合店の立地と魅力度、顧客の居住地からそれぞれの店舗までの距離を用いて計算します。
この地図は、ハフモデルを用いて推定した売上です。推定売上が大きいほうから小さいほうへ、赤⇒黄⇒緑⇒青で示されています。
店舗南東のエリアは店舗から近いにもかかわらず売上推定値が低くなっています。これは店舗南東にある競合店(緑の菱形で示しています)の影響だと思われます。
既存の顧客データの確認
現在ではほとんどの店舗で会員カードやアプリを使ってポイント付与などのサービスを行っています。全体の売上に対する会員売り上げの割合は業種によって様々ですが、一般的にドラッグストアーやスーパーでは7~8割程度と言われています。会員データには顧客の居住地もふくまれていますので、住所ごとの売上や来店頻度を確認することができます。
この地図も売上データが大きいほうから小さいほうへ、赤⇒黄⇒緑⇒青で示されています。赤の破線で示したAのエリアは競合店の影響でかなり落ち込んでいるように見えます。また、Bのエリアも全く集客ができていないことが分かります。Bのエリアが集客できていない理由は、Bのエリアの東側に大きな道路が通っているからです。日常の買物にはこのような大きな道路はハザード(来店への障害)になる場合が多いです。ハザードの例としては、川、鉄道、坂道などがあります。
実際のデータと推定データの比較と考察
では、ハフモデルによる推定データと、売上実績を比較してみます。
ここで示した地図は、最初に示したハフモデルによる推定データと、次に示した実際の売上データを比較した結果を可視化したものです。すなわち推定値と比較して実際の売上の割合を大きいほうから赤⇒黄⇒緑⇒青の色で表現したものです。
これを見ると店舗より北のエリアは推定通り、またはそれを上回る集客ができています。
やはり店舗より南、特に南東部のパフォーマンスの低さがこの店舗の問題のようです。このエリアに広告やポスティングを行う方法、魅力のある店舗づくりで競合店からシェアを奪うなど様々な対策が考えられます。
まとめ
今回の事例は非常に単純なものですが、エリアの分析によってもある程度の状況が理解できます。その分析結果によって、マーケティング戦略を考える際の参考になります。
今回の例では、店舗からの距離と競合店の位置関係から計算した結果として店舗の南東部エリアの不振という問題点が可視化されました。さらに、このエリアの住人が、ファミリー層なのか、単身なのか、高齢世帯が多いのかなど深堀することでより具体的な対策を考えることができると思います。
エリアマーケティングは当社の得意分野です。店舗売上に限らず様々な分野でも応用可能ですので、お気軽にご相談ください。