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2024年10月18日更新

企業理念の社内への浸透

多くの企業では企業理念が存在していても、それが単なる形式的な「標語」や「文書」にとどまってしまっているケースが多いです。企業理念を社内に浸透させることは、企業全体が一貫した方向に向かい、組織としての結束力を高めるために大切なことです。理念を単なるスローガンや理想ではなく、具体的な行動や業務に反映させることは大変ですが重要な経営課題だとおもいます。

当社は、10月1日より社名を変更し、新たな企業理念を定め再スタートしました。

しかし、社名を変えて企業理念を定めても会社内部はこれまでの業務を継続していますので、簡単に変われるものではありません。とくに、これまで全く意識していなかった企業理念については、「抽象的すぎてピンとこない」、「何のために定めたのか分からない」、「もっと具体的な方針を示すべき」などの声も多くの社員から聞かれます。

以下では、当社が直面している課題でもある「企業理念の社内への浸透」を、3つの視点(事業戦略への落とし込み、ボトムアップアプローチ、インナーマーケティングの視点)から考えてみます。

事業戦略に落とし込むプロセス

企業理念を事業戦略に落とし込むことで、全社的な方向性と具体的な行動計画がつながり、理念が現実的な戦略として具現化されます。このプロセスは経営陣の業務のほぼすべてといえるぐらいたいせつなものです。当社のように新たに企業理念を策定した場合、速やかに実行し社内に周知させる必要があります。

理念の共有と理解:
まず、企業理念を経営陣から全社的に発表し、その理念が企業の使命や長期的なビジョンとどう結びつくかを全社員に伝えます。ここでは、特にトップのリーダーシップが重要であり、経営層が理念を自ら体現し、全社員に共感してもらうことが大切です。

部門ごとの戦略策定:
各部門が企業理念に基づき、事業目標や戦略を策定します。一般には中期計画等として策定される場合が多いです。当社のように新たに企業理念を策定した場合には、特に管理部門においては社内制度の方向性を定めることが急務となります。企業理念に基づいた行動を評価・報酬制度と連動させることで、理念の浸透をインセンティブの面から強化できます。

アクションプランの作成:
各部門の戦略をさらに具体的なアクションプランに落とし込み、期限やKPIを設定します。社員一人ひとりがどのように企業理念を日常業務に反映させるかが明確になります。

ボトムアップアプローチ

企業理念を上層部からの指示に従って実行するだけでなく、現場の社員が自発的に理念を理解し、行動に反映させるボトムアップのアプローチができればさらに効果的です。

現場からのフィードバック:
各部門や現場で働く社員からのフィードバックを積極的に取り入れ、理念が実際の業務でどう役立っているかを確認します。もしかすると、まったく機能していないという結果になることもあると思いますが、その場合には適切な対策が必要です。

社員の意見を戦略に反映:
現場で実際に働く社員から提案や意見を募り、企業理念を基にした業務改善や新しいプロジェクトを提案できる仕組み作りは、社員が理念を「自分ごと」として捉える機会となります。

自主的な活動の奨励:
社員が企業理念に基づくプロジェクトや社会貢献活動を自発的に立ち上げる機会を提供します。社員が自主的に理念を体現する活動を行うことで、理念が組織文化に深く根付いていきます。

この様に考えると、社内コミュニケーションの仕組みが官僚的なものであれば、ボトムアップのアプローチは期待できないと思われます。オープンでフラットな組織づくりも企業理念の浸透には効果があると思います。もちろん昔ながらのメンバーシップ型の人事組織で結束の固い事例がありますが、今はそのような時代ではないと思います。

インナーマーケティングの視点

インナーマーケティングの視点では、社員を「顧客」として見なし、企業理念を「商品」として社内に浸透させるためのマーケティング活動と捉えます。社員が理念に共感し、自らの行動に反映するためには、理念を魅力的に伝え、価値を感じさせる必要があります。

当社の場合、冒頭にお話したように、「抽象的すぎてピンとこない」、「何のために定めたのか分からない」、「もっと具体的な方針を示すべき」などの声がありますので、経営陣は、それに対して理解を促すように理念の説明や、具体的な戦略に反映させるプロセスを通じて、商品である企業理念の「プロモーション」をする必要があります。アプローチとしては以下のようなものが考えられます。

理念のブランド化:
企業理念を分かりやすく、魅力的なものとして伝えるために、ビジュアルやメッセージを工夫します。理念に関連するスローガン、ロゴ、などを活用し、理念を社員の日常生活の一部にしていきます。

コミュニケーションの多様化:
社内での理念の浸透を図るために、さまざまなコミュニケーション手段を活用します。イントラネット、社内ニュースレター、ポスター、社内SNSなどを通じて理念を繰り返し強調し、社員が常に理念を意識できるようにします。

双方向のエンゲージメント:
社員の理解を深めるために、双方向のコミュニケーションを重視します。社員の声を聞き、それを理念浸透の活動に反映させることで、社員が理念を自分たちのものとして感じられるようにします。例えば、アンケートやワークショップを通じて、社員が理念をどう捉えているかを確認し、フィードバックを基に施策を改善します。

成功事例の共有と表彰:
企業理念に基づいた行動が成功につながった事例を共有し、模範となる社員やチームを表彰することで、理念の価値を具体的に示します。これにより、社員が理念に基づいた行動を取ることが奨励されます。

まとめ

理念は単に発表するだけでなく、日常業務に結びつけ、社員がその重要性を理解し実践できるような仕組みを整えることが重要です。

理念の浸透は時間がかかるプロセスですが、事業戦略に落とし込むプロセスや、ボトムアップアプローチ、インナーマーケティングとしての取り組みなどを通じて、社員が理念を理解し、自分の仕事にどう活かすかを考えられるような仕組みを作ることで、進んでいくのではないかと思います。しかし何よりも大切なのはトップのリーダーシップです。