2024年10月31日更新
マーケティングコラム:リクルートメントとリピート
成長戦略の中で、特に重要なのが「市場をつくる」ことです。その市場は、リクルートメントとリピートという、たった二つの要素で成り立っています。
市場創造は、新たな需要を掘り起こし、自社の存在価値を顧客に認識させるプロセスです。ゼロから新しい顧客基盤を築き、商品やサービスを提供する力を持つ企業は、長期的な競争優位を確立できるとおもいます。
ただし、ほとんどの企業では、イノベーションによってゼロから市場を作り上げることは少なくて、既存顧客をベースにして新たな需要を開拓していくことが多いのではないかと思います。
リクルートメントとリピート
新しい取り組みや新商品は、まずは誰かが購入してくれることで市場が生まれ、その方々が別の競合商品にスイッチすることなくリピートしてくれることで市場がつくられ、さらに新規購入者が増えることで市場が拡大していきます。
リクルートメント(Recruitment)
リクルートメントは、まだ商品やサービスを利用したことのない新規顧客を獲得することを目的とした活動です。企業は市場調査、広告、プロモーションなどを通じて、潜在顧客に自社の存在と価値を認知させ、興味を引き、購入や利用につなげます。具体的な方法としては、ターゲティング広告、プロモーションや割引、SEOとコンテンツマーケティング、口コミや紹介プログラムなどが代表的です。
リピート(Repeat)
リピートは、既存顧客に再び商品やサービスを購入してもらうことを目的とした活動です。リピーターは、一度商品やサービスに満足した経験を持つため、新規顧客よりも購入率が高く、長期的な利益をもたらす可能性が高いです。具体的には、顧客ロイヤルティプログラム、パーソナライズされたコミュニケーション、アフターサービスやサポート強化などで信頼関係を築きながら、クロスセル・アップセルを目指します。
リクルートメントにはターゲットが重要
新規顧客のリクルートメントにはターゲティングが重要になります。例えば、他社の商品からスイッチさせたい場合と、潜在的な需要を掘り起こして新規購入させたい場合について考えてみます。
・他社商品からのスイッチを狙うグループがターゲットの場合
差別化ポイント(価格、品質、機能、サポート体制など)を明確に伝えることが重要です。さらに、特別な割引やキャンペーンを通じて乗り換えのインセンティブを提供します。例えば、初回割引や無料トライアル、キャッシュバック、ポイント還元などはよく見られる例です。
・潜在的需要を掘り起こすグループがターゲットの場合
必ずしもその商品・サービスの必要性を理解しているとは限らないため、課題を認識させる教育的なコンテンツが有効になります。さらに、フリートライアルや体験会、デモなどを通じて、実際の使用価値やポジティブな体験を提供することも大切です。
このように、ターゲットによってプロモーションの戦略が大きく異なってきます。上の例ではスイッチと潜在需要の掘り起こしの例ですが、それぞれの中にも様々なバックグラウンドをもった顧客にセグメントできますので、それぞれのターゲットに応じた打ち手を考えることが重要です。
リクルートメントとリピートのバランス
ビジネスの成長には、新規顧客の獲得と既存顧客の維持のバランスが不可欠です。京都の老舗料亭などの「すんまへん、一見さんお断りですねん」や、名門ゴルフクラブのように、メンバー同伴でなければプレーできないような例もありますし、観光地のお土産屋さんのようにほとんどが新規顧客の業態もありますので、最適なバランスはそれぞれです。
一般的には、新規顧客の獲得にはコストがかかりますが、既存顧客をリピートさせるコストは相対的に低いため、リピートの強化が収益性を向上させることが多いです。
このような考え方は、サブスクリプションモデルや、通販ビジネスではデータで可視化されるため常に意識されていますが、その他のビジネスにおいても同じような考え方でマーケティング戦略を考えることは重要です。
まとめ
市場は、リクルートメントとリピートという2つのグループで成り立っています。それぞれの目的に応じたマーケティング戦略が異なります。
一般的にはリクルートメントはリピートよりも相対的に大きなコストがかかりますので、既存顧客のリピートが収益を支える場合が多いですが、業態によってその最適なバランスは異なりますが、このような概念を意識してマーケティング戦略を考えることは重要です。