2026年08月30日更新
選ばれる会社は、何が違う?~ブルーオーシャン戦略から考えるマーケティング~
価格を下げる。広告を目立たせる。新しい媒体を試す。競争が激しくなるほど、企業は「競合より優れること」を考えがちです。でも、本当に目指すべきなのは、競争に勝つことなのでしょうか。今回は、ブルーオーシャン戦略を通して、「比較されない価値をつくる」というマーケティングの考え方について考えてみます。
競争するしか、方法はないのだろうか
広告や販促の仕事をしていると、こんな会話を耳にすることがあります。
「競合より安くできない?」
「他社はもっと安いそうです。」
広告担当者は考えます。
- もっと目立つデザインにしよう。
- もっと派手なキャンペーンをしよう。
- もっと価格を下げられないだろうか。
もちろん、それも一つの方法です。
でも、少し立ち止まって考えてみます。
本当に、競争するしか方法はないのでしょうか。
競争に勝つことは大切です。
しかし、競争が激しくなるほど、企業は似たような商品、似たような広告、似たような価格になっていきます。
もしそうだとしたら、私たちが考えるべきなのは「どう勝つか」ではなく、「なぜ競争しているのか」という問いなのかもしれません。
競争すると、みんな似てくる
例えば、家電量販店の広告を思い浮かべてみてください。
- ポイント還元
- 期間限定セール
- 大特価
- 金利0%
どの広告にも、似たような言葉が並んでいます。
飲食店もそうです。
- ランチ980円
- 期間限定メニュー
- 食べ放題
もちろん、お客様にとって魅力的な提案です。
でも、競争が激しくなるほど、各社は似たような施策を打つようになります。
広告でも同じです。
- Google広告
- Instagram広告
- SEO
- 動画広告
媒体は違っていても、伝えている内容は、
- 安い
- 早い
- 安心
という言葉に集約されることが少なくありません。
競争は、差別化を生むどころか、似たもの同士を増やしてしまうことがあります。
だから広告担当者は、「もっと目立とう」と考える前に、「みんなと同じ土俵で戦っていないだろうか」と考えてみることも大切なのかもしれません。
比較されるということは、まだ価値が伝わりきっていないのかもしれない。
お客様が、
- A社
- B社
- C社
を並べて比較しているとします。
比較されるものは、たいてい決まっています。
- 価格
- 機能
- 実績
- 納期
つまり、「どちらが優れているか」という勝負になります。
でも、一方で、最初からこう言われる会社もあります。
「今回は、あそこにお願いしたい。」
その会社にも競合はいるはずです。
それでも、比較されずに選ばれています。
なぜでしょうか。
価格が一番安いからでしょうか。
機能が一番多いからでしょうか。
もちろん、それも理由の一つかもしれません。
でも、多くの場合、それだけではありません。
「この会社だからお願いしたい」という理由があるからです。
比較される会社は、「どちらが良いか」を選ばれます。
比較されない会社は、「ここがいい」と選ばれます。
この違いは、小さいようで、とても大きな違いです。
違いを作るのではなく、新しい価値を作る
こうした考え方を整理したものとして、有名なのがブルーオーシャン戦略です。
ブルーオーシャン戦略は、競合より優れた商品を作る考え方ではありません。
競争そのものを減らし、新しい価値を生み出すという考え方です。
よく例として紹介されるのが、スターバックスです。
スターバックスの話も有名ですが、少し視点を変えて、Appleを考えてみましょう。
Appleは、スマートフォンを販売している会社です。
でも、多くの人は、性能だけでiPhoneを選んでいるのでしょうか。
もちろん、性能は重要です。
しかし、それだけでは説明できない魅力があります。
- 洗練されたデザイン
- ブランドへの共感
- 製品同士がつながる使いやすさ
- Appleらしい体験
そうした価値も含めて選ばれています。
つまり、価格だけでは比較しにくい存在になっています。
一方、スターバックスも同じです。
コーヒーだけを売っているわけではありません。
- 仕事ができる場所
- 少し落ち着ける空間
- お気に入りの時間
そんな体験も、一緒に提供しています。
商品を変えたのではなく、「価値」を増やした。
だから価格競争だけでは語れない存在になっています。
ブルーオーシャンとは、競争相手がいない世界を探すことではありません。
比較される軸そのものを変えること。
それが、この考え方の本質なのかもしれません。
広告も、「どの媒体がいいですか?」から始めない
広告の相談を受けると、最初にこんな質問をいただくことがあります。
「Google広告とInstagram、どちらが効果がありますか?」
もちろん、その答えを考えることも大切です。
でも、その前に考えたいことがあります。
お客様は、何に困っていて、何を実現したいのでしょうか。
例えば、
- 新規のお客様を増やしたい。
- 地域で認知を高めたい。
- ブランドの信頼を築きたい。
- 採用応募を増やしたい。
目的が違えば、選ぶ媒体も変わります。
Google広告が正解のこともあります。
Instagramが向いていることもあります。
折込広告が一番効果的な地域もあります。
SEOが長期的な資産になることもあります。
つまり、媒体に優劣があるのではありません。
価値を届ける相手と目的によって、最適な手段が変わるだけなのです。
広告は、「どこで伝えるか」を考える仕事ではありません。
「何を価値として届けるか」を考える仕事なのかもしれません。
ブルーオーシャンは、新規事業だけの話ではない
ブルーオーシャン戦略というと、
- 革新的な新商品
- 世界的な企業
- 巨大な市場を生み出すサービス
そんなイメージを持つかもしれません。でも、本質はもっと身近なところにあります。
例えば、新聞折込会社。
「チラシを配る会社」と考えれば、比較されるのは価格や実績になりがちです。
でも、
「地域の販促パートナー」という価値で考えたらどうでしょう。
商圏分析。
広告媒体の組み合わせ。
エリアマーケティング。
販促全体の相談。
比較される軸そのものが変わります。
教育会社も同じです。
「英会話教室」ではなく、「子どもの未来を応援する場所」
と考えれば、提供している価値は少し違って見えてきます。
商品そのものは変わっていません。
でも、お客様から見える価値は大きく変わります。
ブルーオーシャンとは、新しい商品をつくることではなく、新しい価値の見え方をつくることなのかもしれません。
「違い」を探すより、「理由」をつくる
広告では、「他社との違い」を考えることがあります。
もちろん、差別化は大切です。
でも、差別化だけを追いかけると、競合が真似をすれば、また違いを探さなければなりません。終わりのない競争です。
それよりも考えたいのは、
「なぜ、この会社を選びたいと思うのだろう。」
という問いです。
その理由は、価格ではないかもしれません。広告でもないかもしれません。
担当者への信頼。
ブランドへの共感。
相談しやすさ。
安心感。
そうした積み重ねが、「比較されない理由」になっていきます。
違いを探すことよりも、選ばれる理由を育てること。
それが、長く選ばれる会社につながるのではないでしょうか。
まとめ
競争に勝つことは、とても大切です。
でも、競争に勝ち続けることは、簡単ではありません。
だからこそ、ときには、
「どう勝つか」ではなく、「なぜ比較されているのだろう」と考えてみる。
その問いが、新しい価値を生み出すきっかけになるのかもしれません。
ブルーオーシャン戦略とは、競争を避ける方法ではありません。
選ばれる理由を、自分たちでつくるという考え方です。
広告担当者は、競合より目立つ広告を考えているようで、本当に考えているべきなのは、
「なぜ、この会社は比較されてしまうのだろう。」
という問いなのかもしれません。
価格を下げる。
目立つ広告をつくる。
新しい媒体を試してみる。
それも、一つの方法です。
でも、もし比較されない理由をつくることができたら。
広告の役割も、少し違って見えてくるのではないでしょうか。