2026年07月10日更新
広告媒体を選ぶ前に、考えたいこと。 ~教育業界から考える「マーケティング思考」~
広告担当者が経営者から、
「会員を増やして」
という指示を受けたとき、最初に何を考えるでしょうか。
Google広告?Instagram?YouTube?折込チラシ?
それとも、キャンペーン?キャッチコピー?SEO対策でしょうか?
長年広告に携わっていると、
「会員を増やしたい」と相談を受ければ、真っ先に広告媒体を考えてしまいがちです。
広告を実施しながら、勝ちパターンを模索していき、それでもダメなら、会員数が伸び悩む場合、「広告代理店に頼んでみようかな」「取引先をかえてみようかな」とか考えるのではないでしょうか。
そもそも会員を増やすために、広告を実施したりするわけですが、
本当に「保護者は広告を見て習い事を検討しはじめたり、決定したりしている」
のでしょうか
媒体を選ぶことは大切です。
ただ、その前に「誰が、どのように意思決定しているのか」という視点を加えることで、媒体選びの精度はさらに高まるのではないでしょうか。
保護者は、どのように習い事を決めているのか
もし、自分がお子さまの習い事を探す保護者だったら、どのように教室を選ぶでしょうか。
最初から、
「この英会話教室に通わせよう」
と決めている人は、ほとんどいないと思います。
友人から、
「うちも英会話を始めたよ。」
と聞いたことがきっかけかもしれません。
学校で英語の授業が始まり、
「うちの子、大丈夫かな。」
と少し不安になったのかもしれません。
SNSで広告を見かけたことが、頭の片隅に残っていたのかもしれません。
そこから検索し、ホームページを見て、口コミを確認し、料金や場所を比べ、体験レッスンに参加して、ようやく入会を決める。
そう考えると、広告を見てすぐに入会というケースは、あまりないように感じます。
むしろ、さまざまな情報に触れながら、少しずつ気持ちが動いていく。
「広告を見る」ことと、「習い事を決める」ことの間には、想像以上に長いプロセスがあるんですね。
マーケティングでは、このようなお客様の行動や心理の変化を整理したものを
「カスタマージャーニー」と呼びます。
「お客様は、どんな順番で意思決定しているのだろう。」
そう考えてみることから始まります。
広告は意思決定を後押しする「接点の一つ」なのかもしれません。
さて、
「保護者は、みんな同じように意思決定しているのでしょうか」
この疑問が、次のテーマにつながっていきます。
すべての保護者に、同じ広告を届けていいのだろうか。
「保護者は、みんな同じように習い事を選んでいるのだろうか。」
新しい教育法に興味があり、
「面白そうだから体験してみたい」
と考える人もいます。
一方で、
「周りのお友達が通っているなら安心」
「口コミが増えてから考えたい」
という人もいます。
また、
「学校の授業についていければ十分かな」
「まだ少し早いかもしれない」
「学校の授業だけで十分かな。」
と考える家庭もあります。
つまり、同じ広告を見ても、同じように反応するとは限らないのです。
ここで参考になる考え方として、「ペルソナ」や「イノベーター理論」です。
イノベーター理論では、新しい商品やサービスを受け入れるタイミングによって、人をいくつかの層に分けて考えます。
- 新しいものを積極的に試す「イノベーター」
- 流行を先取りする「アーリーアダプター」
- 普及し始めてから動く「アーリーマジョリティ」
- 多くの人が利用してから安心して選ぶ「レイトマジョリティ」
- 最後まで慎重な「ラガード」
もちろん、習い事をこの理論だけで説明できるわけではありませんが、
「良い広告」とは、必ずしも全員に響く広告ではないということ。
広告を考えるうえでは、例えば同じ英会話教室でも、
アーリーアダプター
AI英会話を体験してみませんか?
アーリーマジョリティ
多くの保護者に選ばれている新しい英会話教室です。
レイトマジョリティ
地域で10年以上。卒業生○○名の安心の実績。
という言葉の方が届きやすいかもしれません。
同じサービスでも、誰に届けるかによって、伝えるべき内容は変わることがあります。
ここまで考えると、広告で最初に考えるべきことは、媒体ではなく、
「誰に届けるのか」なのかもしれません。
だからSTP分析が必要になる
ここまでの話を整理すると、マーケティングでよく使われるSTP分析につながります。
STP分析とは、
- 市場を分ける:Segmentation
- 誰を狙うか決める:Targeting
- どう選ばれるか考える:Positioning
という考え方です。
最初からフレームワークを覚えようとすると、少し難しく感じるかもしれません。
今回のように、
- 保護者はどうやって習い事を決めているのか。
- どんな不安や期待を持っているのか。
- 新しいものに反応しやすい人なのか、安心材料を求める人なのか。
そう考えていくと、自然とSTP分析に近いことを考えていることに気付きます。
つまり、STP分析は、
「誰に、どんな価値を届けるのか」を整理するための道具
といったところでしょうか。
教育業界でいえば、
- 早期教育に関心が高い保護者
- 学校英語への不安を感じている保護者
- 友人や口コミを重視する保護者
- 通いやすさや安心感を重視する保護者
など、さまざまな層が考えられます。
その中で、誰に届けるのか。
そして、その人にとって自社の教室はどのような存在として選ばれるのか。
ここを整理しないまま広告を考えると、メッセージがぼんやりしてしまいます。
逆に、ここが整理できると、広告で伝えるべきことも、かなり見えやすくなります。
お客様の行動や考え方を整理していくと、自然とこの考え方にたどり着く。それがSTP分析なのだと思います。
媒体は最後に考える
ここまで整理して、ようやく媒体を考える段階に入ります。
・Google広告がよいのか。
・Instagramがよいのか。
・YouTubeなのか。
・SEOなのか。
・折込チラシなのか。
どれが正解という話ではありません。
大切なのは、誰が、どのタイミングで、何を考えているのかを踏まえて媒体を選ぶことです。
例えば、すでに英会話教室を探している人には、検索広告やSEOが有効かもしれません。
まだ具体的に探していない人には、SNS広告や動画広告で認知をつくることが役立つかもしれません。
地域での安心感を伝えたいなら、折込チラシや地域メディアが合う場合もあります。
体験レッスン後の不安を解消するなら、メールやLINEでのフォローが重要になるかもしれません。
クリエイティブを変える必要があることもあるでしょう。
つまり媒体は、最初に選ぶものではなく、
お客様の意思決定過程を理解したあとに、その接点として選ぶもの
なのだと思います。
もちろん、媒体選びは販促担当者にとって重要な仕事です。
ただ、その前に、誰に届けるのか、どのような気持ちの変化を後押ししたいのかを考えることで、媒体選びの精度はさらに高まるのではないでしょうか。
まとめ
今回は教育業界を例に、マーケティングについて考えてみました。「会員を増やしたい」
そう考えたとき、私たちはつい広告媒体から考え始めてしまいます。
もちろん、それは販促担当者として大切な仕事です。
しかし、その前に、「お客様は、どのように意思決定しているのだろう」
という問いを持つことで、広告の役割も、選ぶべき媒体もクリエイティブも変わってくるのかもしれません
保護者は、広告ではなく、「未来のわが子」を想像しながら意思決定しています。さまざまな情報に触れ、不安や期待を持ち、比較し、納得しながら少しずつ意思決定しています。そして、すべての保護者が同じように反応するわけでもありません。
だからこそ、
広告を考える前に、まずはお客様を理解すること。
そのうえで、誰に、何を、どの接点で届けるのかを考えること。
それが、販促やマーケティングにおいて大切なのだと思います。
販促担当の仕事は、広告媒体を選ぶ仕事であると同時に、人の意思決定を理解する仕事なのかもしれません。