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2026年09月10日更新

「すごい」じゃ、足りない? ~「超」「鬼」「神」「〇〇すぎて滅」から考える、言葉のインフレ~

「すごい」じゃ、足りない?
~「超」「鬼」「神」「〇〇すぎて滅」から考える、言葉のインフレ~

「〇〇すぎて滅」って、そこまで言う?

最近、SNSなどで「〇〇すぎて滅」という表現を見かけることがあります。「かわいすぎて滅」「尊すぎて滅」「しんどすぎて滅」といった具合です。

もちろん、本当に滅びるわけではありません。自分の感情が振り切れるほど「すごい」ということを、少し大げさに、そして面白く伝える表現です。

2026年6月に15~29歳を対象として行われた調査では、「2026年上半期で最も流行ったと思う言葉」として、「〇〇すぎて滅」は具体的な言葉の中で最も高い27.0%。特に15~19歳女性では35.0%、高校生では37.4%となっています。

ただ、ここで考えてみたいのは、この言葉が流行っていることそのものではありません。

なぜ、「すごい」だけでは足りなくなったのでしょうか。

そう考えてみると、「〇〇すぎて滅」は、突然現れた不思議な言葉というより、昔から続いている日本語の強調表現の延長線上にあるようにも見えてきます。

私たちは、昔から「すごい」を強くしてきた

少し前を思い出してみましょう。

「超かわいい」「激安」「鬼うまい」「神対応」。年代や使われ方には重なりがありますが、私たちは昔から、普通の言葉だけでは足りないときに、さまざまな言葉を足して感情を強く表現してきました。

  • 超かわいい
  • 激うま
  • 鬼しんどい
  • 神対応
  • 〇〇すぎて滅

こうして並べると、なんだか壮大です。「超」から始まり、「鬼」が登場し、「神」にまで到達したと思ったら、今度は自分が「滅」びてしまいました。

もちろん、これは言葉がきれいにこの順番で流行したという意味ではありません。「鬼」を「とても」「やばいくらい」という意味で使う例は1990年代にも確認され、「神」も2000年代後半には新語として注目されています。2016年には「神ってる」が新語・流行語大賞の年間大賞にもなりました。

表現は変わっても、「自分が感じた大きさを、普通より少し強い言葉で伝えたい」という気持ちは、昔からあまり変わっていないのかもしれません。

なぜ、強い言葉は普通になってしまうのか

初めて「超かわいい」と聞いたとき、「かわいい」よりも強い感情が伝わったはずです。でも、みんなが「超」を使うようになると、それほど強く感じなくなります。

「激安」も同じです。街中の広告で毎日のように「激安」を見ていれば、いつしか特別な表現ではなくなっていきます。

そこで、もっと強く伝えようとする。

「すごい」より「超すごい」。「超すごい」より「鬼すごい」。さらに「神」、そして「滅」。

強い表現が広がれば広がるほど、その言葉に慣れてしまい、また新しい表現が生まれる。そんな循環があるように見えます。

強い言葉は、使われるほど強くなくなっていく。

これをここでは、少し大げさに「言葉のインフレ」と呼んでみましょう。

広告の世界でも、「言葉のインフレ」は起きている

ここまで若者言葉の話をしてきましたが、少し仕事に目を向けてみると、似たようなことが広告の世界でも起きています。

たとえば、こんな言葉を見たことはないでしょうか。

  • 圧倒的な品質
  • 驚きの価格
  • 大人気の商品
  • 今だけの特別価格
  • 絶対に見逃せない

 

一つひとつを見れば、決しておかしな表現ではありません。実際に、それだけ伝えたい価値がある場合もあります。

でも、世の中の広告がみんな「圧倒的」で、みんな「驚き」で、みんな「特別」だったらどうでしょう。

受け手にとっては、それが普通になってしまいます。

目立つために言葉を強くする。しかし、みんなが強くすると、誰も強く見えなくなる。

広告もまた、若者言葉とは違う形で「言葉のインフレ」と付き合っているのかもしれません。

「強い言葉」と「伝わる言葉」は、同じだろうか

では、広告では強い言葉を使わない方がいいのでしょうか。

もちろん、そう単純な話ではありません。商品の魅力を端的に伝えるために、強い表現が有効な場面もあります。

ただ、一度立ち止まって考えてみる価値はありそうです。

たとえば「圧倒的においしい」と言われるより、「毎週金曜日になると買いに来るお客様がいます」と言われた方が、おいしさを想像できることがあります。

「驚きの軽さ」と言われるより、「500mlのペットボトルより軽い」と言われた方が、その軽さを実感できるかもしれません。

「大人気」と言われるより、「発売から3か月で10万個」と具体的な数字を示された方が、納得できることもあります。

言葉そのものを強くするのではなく、受け手の中に「それはすごい」と感じる理由をつくる。

こちらの方が、結果として強く伝わることもあります。

「〇〇すぎて滅」が教えてくれる、もう一つのこと

「超」「激」「鬼」「神」、そして「〇〇すぎて滅」。言葉だけを見ると、ずいぶん遠くまで来たような気がします。

でも、その根っこにあるのは、「自分が感じたこの気持ちを、相手にも感じてほしい」という、とてもシンプルな欲求なのかもしれません。

これは広告も同じです。

「圧倒的」「最高」「大人気」と書くことが目的なのではなく、その商品やサービスの魅力を、相手にも感じてもらうことが目的です。

あなたが今つくっている広告から、「すごい」という言葉を全部取ったとしたら、その商品のすごさをどう伝えますか。

強い言葉を探す前に、「なぜ、それがすごいのか」をもう一度考えてみる。そこから生まれる言葉の方が、案外、相手の心に残るのかもしれません。

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