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2026年09月20日更新

秋なのに、もう年末年始? ~広告が一年でにぎわう季節に、企業は何を考えているのか~

夏が過ぎ、少しずつ涼しい日が増えてきました。ようやく秋――なのですが、広告や販促の仕事をしていると、そろそろ考え始めるのは、その先にある冬のことです。

ブラックフライデー、クリスマス、歳末商戦、年越し、初売り、福袋。年末年始は、街にもWebにも広告が増える季節です。

でも、少し眺めてみると不思議です。12月には「今買ってください」と盛んに呼びかけていた企業が、年が明けると「今年もよろしくお願いします」と語り始める。セールを前面に出す企業もあれば、商品をほとんど見せず、会社の姿勢や未来を伝える企業もあります。

生活者はこの時期、どんなふうに動いているのでしょう。そして企業は、誰に、いつ、何を伝えようとしているのでしょうか。今回は、年末年始の広告をいろいろなデータと一緒に眺めながら考えてみます。

年末年始は、一つの商戦ではない

ひとことで「年末年始商戦」と呼びますが、実際には11月後半から1月上旬まで、生活者の関心はかなり短い周期で変わっていきます。

ざっくり分けると、年末年始には次のような流れがあります。

  • 11月下旬~12月上旬:ブラックフライデー、冬支度、早割、予約などの「先取り・準備」
  • 12月中旬~25日:ギフト、ごちそう、ケーキ、玩具などの「クリスマス」
  • 12月26日~31日:歳末セール、大掃除、帰省、年越し食材などの「年越し準備」
  • 1月1日~10日前後:初売り、福袋、新春セールなどの「新年の初買い」

12月25日を境に、店頭の赤と緑が、一晩で紅白や金色に変わる。広告の世界ではおなじみの光景です。

実際、全国の主要食品スーパー100社の折込チラシを集計したチラシレポート社の調査でも、2025年12月の販促企画は「歳末・年越」が延べ341回で最も多く、「クリスマス」が242回で続きました。ところが2026年1月になると、「正月」が157回で最多となり、「節分」が139回で続きます。

カレンダーが一枚めくられるだけでなく、生活者の関心そのものが次々と切り替わっている。

企業は、その変化を追いながら広告のテーマを組み替えているようです。

※時期・区分は主な販促テーマをもとに整理したイメージです

本当に、年末は広告が増えている?

「年末になると広告が多い気がする」。その感覚は、数字にも表れています。

朝日オリコミグループの2025年全国折込広告出稿統計では、1世帯あたりの折込枚数は年間3,501.6枚、月平均291.8枚でした。その中で最も多かった月は12月の327.2枚です。

近畿でも、2025年12月は1世帯平均331.6枚。前年同月を5.1%上回りました。業種別では「流通」が全体の55.8%、「サービス業」が26.4%で、この2業種だけで8割以上を占めています。

つまり年末は、買い物やサービス利用を促す広告が、実際に多く投下される時期だといえそうです。

背景には、生活者側のお金の動きもあります。総務省の家計調査によると、2025年12月の二人以上の世帯の消費支出は、1世帯あたり351,522円。2025年の月平均314,001円を上回っています。

ただし、「年末だから何でも売れる」と単純に考えるのは少し違うかもしれません。2025年12月の消費支出は前年同月比では実質2.6%減少しています。

別の調査では、年末年始の買い物でも節約意識を持ちながら、使うところには使う「メリハリ消費」の傾向も見られます。お金が動く季節だからといって、生活者の財布のひもが一様に緩むわけではなさそうです。

年末年始、生活者はどこでお得情報を探している?

では、生活者は年末年始のお得な情報を、どこで見つけようとしているのでしょうか。

株式会社アルファが2026年に20~59歳の男女666人を対象に行った「年末年始のお買い物に関する意識調査」では、これから迎える年末年始のお買い得情報をどこで見つけるかを尋ねたところ、お得情報を見つける場所として最も多かったのが「店頭POP・店内表示」の30.9%でした。

次いで「折込チラシ・新聞」が26.9%、「店の公式アプリ・LINE」が22.5%となっています。

スマートフォンで情報を探すことが当たり前になった今でも、年末年始の買い物では、店頭や紙の情報がかなり身近な接点として意識されていることが分かります。

考えてみると、年末年始の買い物には少し特殊なところがあります。

「何かおすすめの商品はないかな」という発見だけでなく、「近所のスーパーは何時から?」「初売りはいつ?」「今日は何が安い?」といった、場所や時間と強く結びついた情報を探す場面が多いからです。

そのため、Web広告、SNS、検索、アプリ、折込チラシ、店頭POPなどの役割も、それぞれ少しずつ違います。

どの媒体が一番強いか、というよりも、生活者がその瞬間に何を知りたいのか。

年末年始の広告を見ていると、媒体の役割もそんなふうに見えてきます。

「今買ってほしい」だけではない広告もある

年末の広告は比較的分かりやすいものが多くあります。

クリスマスケーキを予約してほしい。おせちを買ってほしい。歳末セールへ来てほしい。広告を見た人に、近いうちに何か行動してもらうことが目的です。

ところが元日になると、少し違った広告も目立ちます。折込広告でも、2026年1月の近畿では元日が1世帯平均33.8枚と、この月で最も多い出稿日でした。

2026年の元日新聞を見ても、初売りや商品広告だけでなく、周年を伝える広告や、企業・ブランドの姿勢を前面に出した全面広告など、さまざまな表現が並びました。

すぐに商品を買ってもらえるとは限らないのに、なぜ企業はこうした広告を出すのでしょう。

広告の相手は、必ずしも「今日買う人」だけではありません。

自動車、住宅、リフォーム、保険、学習塾、冠婚葬祭などを考えてみると分かりやすいかもしれません。広告を見たその日に利用する人は、ごく一部です。

でも半年後、1年後、数年後に必要になる人はいる。

そんなとき、まったく知らない会社と、「あ、この会社は見たことがある」という会社では、スタート地点が少し違います。

マーケティングでは、商品やサービスが必要になったときにブランドが頭に浮かびやすい状態を「メンタル・アベイラビリティ」と呼ぶことがあります。

難しく考えなくても、

「○○といえば?」と聞かれたとき、自社の名前は浮かぶだろうか。

と考えると分かりやすそうです。

最初に名前が出る「第一想起」でなくてもいい。3社挙げてもらったら入るか。10社ならどうか。

これは厳密な効果測定の基準ではありませんが、広告が「今すぐ買う人」だけではなく、「いつか買うかもしれない人」に何を残しているのかを考えるヒントになります。

では、中小企業はどう考える?

大企業のブランド広告を見ていると、「うちにはそんな予算はない」と感じるかもしれません。

確かに、全国規模でテレビCMや新聞全面広告を繰り返すことは、多くの中小企業には現実的ではありません。

でも、そもそも全国の人に覚えてもらう必要があるのでしょうか。

地域で事業をしている会社なら、考える範囲をもっと小さくできます。

「日本でリフォームといえば」ではなく、「この地域でリフォームといえば」。

「全国の学習塾といえば」ではなく、「この辺で高校受験を考えるなら」。

その地域、その商品、その困りごとで考えたときに、候補の一つとして名前が浮かぶ。

中小企業のブランディングは、「全国で有名になること」ではなく、「必要な人の選択肢に入ること」と考えてもよさそうです。

もちろん、一度広告を出しただけで覚えてもらえるとは限りません。

折込チラシで見た。街の看板でも見た。SNSにも出てきた。後日検索したら、また同じ会社が出てきた。

そうした接触が重なって、「知らない会社」から「見たことのある会社」へ変わっていくこともあります。

年末年始のように広告が多い時期だからこそ、値段やキャンペーンだけでなく、会社名、ロゴ、言葉、デザインなど、「何を覚えてもらいたいか」を少し考えてみる意味はありそうです。

年末年始に広告するなら、何を伝えよう

年末年始には、いろいろな広告があります。

ブラックフライデーで早く動いてもらう広告。クリスマスの気分を盛り上げる広告。歳末のまとめ買いを促す広告。初売りへ来てもらう広告。

そして、「今年もよろしくお願いします」と会社の存在を伝える広告や、「私たちはこんな会社です」と未来の顧客に語りかける広告もあります。

同じ年末年始でも、企業によって狙っているものはずいぶん違います。

広告が増える季節だからこそ、つい「何を出すか」「どの媒体を使うか」から考えてしまいます。

でも、その前に少しだけ立ち止まってみてもいいのかもしれません。

この年末年始、自社は誰の、どんな場面に入りたいでしょうか。

今週買ってくれる人かもしれません。

初売りを楽しみにしている人かもしれません。

あるいは、今はまだ必要としていないけれど、いつか「そういえば、あの会社があったな」と思い出してほしい人かもしれません。

秋になったばかりですが、広告の仕事では、もう冬を考える季節です。

今年の年末年始、街や新聞、スマートフォンにどんな広告が増えていくのか。そんな目で眺めてみると、いつもの広告が少し違って見えてくるかもしれません。

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